遠回りの習慣

私が引っ越しときにまず最初にやることのひとつに、通っていて楽しい通勤路を見つける、というのがある。

今の家から職場までの道のりは、小川沿いのアップダウンのある小道を走り、緑の深い山影を抜け、果樹園のある住宅街を横目に、大きな川沿いの道をゆく。合間合間に、マンション、お屋敷、古びたアパート・・・などいろんな形の家を見る。

だけどこれはかなり遠回りのルートだ。家から職場までは大きな道路が1本まっすぐ通っているので、そこを走れば単純に距離としては1キロくらい短くなる。でもそのルートはいわゆる道路で、車の数が多いのでちょっとストレスフルだ。

以前の家から職場までの道のりは大通り沿いだったけど、途中お堀と大きな川があった。その前は、疎水沿いの住人が丹精した庭を身ながら通勤していた。

こういうのは最初が肝心で、最短ルートに慣れてからだと、いくら景色が良くても遠回りをする気にはなれなくて(20分で着くところを、30分かけて・・・とかつい考えちゃうから)、やっぱり最初に楽しい道中を見つけておくことが大事なんだと思う。

4月の終わりから5月の中頃にかけては、緑の芽吹きが本当にきれいだ。晴れた日など、豪奢なアクセサリーみたいだなと毎年思う。これからの季節は蛍も飛ぶし、私の一番好きな花、いろんな形の紫陽花がそこらじゅうで咲き乱れる。笑っちゃうほど寒いけど、真冬の枯れた川辺の景色もいとおしい。

つらいときや疲れているときはこれらの景色を見る、そのためだけに生きていると、正直何度も思った。また、元気なときは、これらの景色とともに生きていることに感謝する。